(写真)ワイオミング州 Casper で見た皆既日食(2017年8月21日)
はじめに
4月8日(月)の皆既日食まで,あと1週間ちょっととなりました.
太陽が完全に月に隠され,日中でも夕方のように暗くなる皆既日食を見るチャンスは一生に一度くらいのチャンス.
ここでは,この皆既日食の情報をまとめます.
(1)場所: 皆既日食はどこで見えるか
どこで皆既日食が見えるか?
下の図は NASA の皆既日食特集ページの "Where and When" をキャプチャしたものですが,このグレーの帯内で皆既日食が見られます.
アメリカ国内では,テキサス(午後1時半頃 CST)から始まり,北東方向に進行し,メイン州(午後3時半頃 EST)まで見えます.
時間は現地時刻なので,アメリカ国内で皆既日食が起こる時間は,トータルで約1時間です.
→ リンク "Eclipse Explorer", 2024 Total Solar Eclipse, NASA (拡大できるマップ)
→ リンク "Where and When", 2024 Total Solar Eclipse, NASA(いろいろな素材)
より詳細なマップは,下の「補足情報(1)場所: 皆既日食はどこで見えるか」で掲載しています.
(2)時間: 皆既日食となるのはいつか(何時か)
まず,アメリカで皆既日食が最初に見られる都市 テキサス州 San Antonio で 午後 1時34分頃,後半の方の オハイオ州 Cleveland で 午後 3時13分頃です(現地時間).
詳細は,下の「補足情報(2)時間: 皆既日食になるのはいつか」の章を参照してください.
各都市で皆既日食になる時間は,NASA のサイト
→ リンク "Eclipse Explorer", 2024 Total Solar Eclipse, NASA (拡大できるマップ)
のツールで確認できます.
下図は,そのツールを利用しているものです.
マップ内のある地点をクリックし,左の縦のオレンジ色のバー(黄色い矢印で示しているバー)を上下にスライドすることで,皆既日食になるタイミング(時間)を知ることができます.
目的の地点がオレンジ色の円に囲まれていると皆既日食が見える時間帯です.
その目的の場所に近い都市について,日食の進行情報(太陽が欠けた形が表示)と時刻,皆既日食の継続時間(Duration of Totality)が表示されます(下図は San Antonio に関する情報).
各主要都市のキャプチャ図は 下の「補足情報(2)時間: 皆既日食になるのはいつか」で掲載しています.
(3)天気予報
皆既日食が見える場所へ行っても,太陽が雲に隠れていると日食を見ることができません.
皆既日食の日の3,4日前に天気予報を確認し,もし天気が悪い可能性が高そうであれば,(移動手段があるのであれば),観測場所を変更することが可能です.
天気予報はアメリカの「気象庁」に相当する NOAA (アメリカ海洋大樹町)のNWS(アメリカ気象局) の予報が参考になります.
国の機関なので広告もありません.
以下は,各都市の天気予報のリンクです.
- San Antonio, NOAA NWS
- Dallas, NOAA NWS
- Austin, NOAA NWS
- Indianapolis, NOAA NWS
- Cleveland,NOAA NWS
このリンクでは1週間先の予報まで確認できます.
日食数日前になると天気予報が当たる確率が高くなるので,確実に天気が悪くなりそうであれば,自家用車,レンタカーで皆既日食が見える場所に訪問する予定の場合,場所を変更する余裕があります.
追記(4/5): NOAA WPC から日食時の雲予報が提供されています(毎日更新)
NOAA WPC リンク: https://www.wpc.ncep.noaa.gov/key_messages/LatestKeyMessage_2.png
→ 関連ブログ 「皆既日食時の雲の予報: NOAA 天気予報センター(WPC)提供 日食当日まで毎日更新」(4/5)
(4)日食を見るには
皆既日食時
皆既日食時(太陽は100%月に隠されている時間帯)は直接目で見て大丈夫です(皆既日食継続時間は,場所により数秒〜数分間)
太陽に雲がかかってなければ美しいコロナが見えます!
皆既日食時以外(重要!)
皆既日食以外(太陽が100%欠けていない場合)は専用の遮光板が必須です.
太陽がほとんど欠けていても(とても細い三日月状になっていても)だめです.
直接見ると,網膜が焼ける,視野欠損が生じる,失明する可能性があるので,絶対に遮光板無しで太陽を見ないように注意してください.
→ 参考リンク 2009年7月22日皆既日食の情報,国立天文台
太陽観測用の遮光板,太陽専用双眼鏡は,コンテンツ 「アメリカの皆既日食 -観察と撮影」で紹介しています.
(5)写真を撮るには
カメラの設置方法,レンズ,NDフィルター選択,露出決定など実際の撮影については,ブログ記事「アメリカ金環日食(部分日食) レンズにフィルターを着けカメラで観測」で紹介しています.
皆既日食時の撮影
皆既日食時はフィルター無しで写真が撮影できます.
感度ISO200, 絞りF8では、シャッタースピード1/500 1/250 1/125 1/60と順に撮影する予定です。
皆既日食以外の撮影時(部分日食)
部分日食時は太陽が明るすぎカメラ(レンズ)の露出制御の範囲外になるため,NDフィルターの装着が必要です.
「アメリカ金環日食(部分日食) レンズにフィルターを着けカメラで観測」で部分日食時の太陽の撮影の様子について紹介しています.
フィルターは,ND100000 ( 光量を百万分の1に減衰)1枚あればOK.
このNDフィルター1枚装着すれば,カメラを一般的な露出値(シャッタースピード,絞り)範囲内に設定できます.
(Amazon US) ICE 77mm ND100000 (→ 記事)
ICE 77mm ND100000 Optical Glass Filter Neutral Density 16.5 Stop
(アマゾン ジャパン) Kenko ND100000 フィルター
Kenko NDフィルター 77mm PRO ND100000 日食撮影用
(写真)ICE ND100000 フィルター(実際に使っているもの)
カメラの露出は事前に確認
日食の前に,太陽を撮影し,欠けていない場合の適正露出を求めておくと,当日参考になります.
例えば,ブログ「太陽黒点・黒点群 増加傾向」で紹介している以下の太陽の写真は,
> ISO200, F8,1/1000 で撮影しました.
(写真)2023年2月12日の太陽面(DMC-GM5, Tokina SZX 400, F8, ND100000, ISO200, 1/1000)
絞り F8 で固定するのであれば,日食に始めは 1/1000 からスタート,日食の進行に応じ,シャッタースピードを 1/500, 1/250, 1/125, ... のように変化させると適正露出となります.
ピント合わせはマニュアルで
太陽面(無限遠に近い)にピントを合わせるのは結構難しいです.
ピント合わせはマニュアルフォーカスモードにし,モニターに表示される太陽面を拡大し,太陽面の端がくっきりなるところを探して合わせます.
適正露出でピントの合った写真になったかどうかについては,撮影後にプレビューし,太陽黒点がくっきり見えればOKかと思います.
光学ファインダーは要注意
ミラーレスで無い一眼レフカメラを利用する場合,光学ファインダーの利用はお勧めしません.
万が一 ND フィルターをつけ忘れて光学ファインダーを見てしまった場合,あるいは減光が足りなかった場合,網膜が焼ける,視野欠損が生じる,失明する可能性があります.
光学ファインダーではなく,液晶画面で構図を確認することを強くお勧めします.
補足情報(1)場所: 皆既日食はどこで見えるか
以下は NASA のサイト("Eclipse Explorer", 2024 Total Solar Eclipse, NASA)の皆既日食の経路マップをキャプチャしたものを,南西から北東方向に並べたものです.
マップ中のグレーの帯のエリアで,晴れていれば,皆既日食を見ることができます.
マップの中心ほど皆既日食の時間が長くなるので,移動する手段があれば帯の中心の方に移動すると良いと思います.
テキサス州
アーカンソー州からインディアナ州
インディアナ州からオハイオ州
オハイオ州からバーモント州
バーモント州からメイン州
補足情報(2)時間: 皆既日食になるのはいつか
皆既日食が見える主要都市について,皆既日食の長さ,時間を,NASA のサイト("Eclipse Explorer", 2024 Total Solar Eclipse, NASA)からキャプチャしました.
San Antonio
午後 1時34分頃
見える時間: 18秒間(端の方に位置しているので短いです)
Austin
午後 1時35分頃
見える時間: 2分9秒間(帯の端の方ですが,比較的長く見れます)
Dallas
午後 1時40分頃
見える時間: 3分51秒間(比較的帯の中心に近いので長く見れます)
Indianapolis
午後 3時6分頃
見える時間: 3分47秒間(帯の中心に近いので長く見れます)
Cleveland
午後 3時13分頃
見える時間: 3分49秒間(比較的帯の中心に近いので長く見れます)
これから観測プランを立てる場合
飛行機での移動は,滞在期間を延ばすなどしないとかなり厳しいです.
皆既日食が見られるエリアの近くの空港へ向かう航空券は,既に売り切れか,とても高くなっています(エコノミーで,安い時の10倍程度も).
もし航空券を購入できたとしても,レンタカーは予約いっぱいで借りることができない空港が多いです.
日食関係グッズは手に入りにくい状態になっています.
皆既日食エリアから離れたローカルなカメラ屋さんなどで,在庫がありかもしれません.
実際,既に今週末に,実家のあるテキサスに向かったオフィスのスタッフはNDフィルターを探していたのですが,近いボルダーのカメラ屋には既に在庫無し,遠くのデンバーのカメラ屋から1個だけ在庫のあったフィルターを購入しました.
車で移動すると,天気によりある程度観測場所を変更できます.
でも,日食が終わった後は普段は起きない大渋滞になる可能性が高いので注意が必要です.
最後に,一番重要なのは,当日の天気.
1週間以上先の天気予報の精度はあまり良くありません.でも,およその天気の傾向は掴むことができます.
例えば,日食当日の天気が雨で,その前後の日が曇りであれば,ちょっと難しいそうなので,要検討かもしれません.
終わりに
皆既日食は,場所を移動しないと,そして,天気が良くないと見ることができない一生に一回ものの(移動しないと一生見ることができない場合もある)現象です.
日食を見る予定の方は,事前検討・準備をしっかりして後悔しないように.
(私の前回の皆既日食時の後悔は,カメラに気を取られ,実際の皆既日食時の太陽の様子を良く見れなかったこと,それからレンズ選びの失敗です).
下の写真は,ワイオミング州 Casper で見た皆既日食(2017年8月21日)時のものです.
4月8日の皆既日食では,多くの場所で,より多くの方が,このような皆既日食を見ることができることを期待しています.
追記: 皆既日食1日前(4/7)
皆既日食1日前,機材を準備しました.
カメラとレンズはコンパクトで軽量なマイクロフォーサーズシステム,三脚は小さく折り畳めるので,バックパック1個で済みます.
もし皆既日食時に曇ったら,カメラは使わず,iPhone mini で周辺が暗くなる瞬間の動画を撮るくらいかもしれません.
レンズの汚れのクリーニング(iPhone のレンズの指紋も),予備バッテリー(モバイルバッテリー)を忘れずに.
(アマゾン ジャパン) アーテック 太陽グラス (→ 記事)
アーテック 太陽グラス(ブリスターパック) 076079 青 A076079
(Amazon US) Celestron (天体望遠鏡メーカー)の双眼鏡 (→ 記事)
太陽観察・日食観察用双眼鏡
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(カメラの設置方法,レンズ,NDフィルター選択,露出決定など実際の撮影について)
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