クラシカルオステオパシー?

オステオパシー?

施術


 オステオパシーとは、1874年にスコットランド系アメリカ人医師A・T・スティル博士によって提唱された医学体系です。現在全米に23のオステオパシー医科大学があり、米国政府公認の医学として様々な疾患に対して活用されています。

 実際コロラド州に長年住む親友から話を聞いても、MD(Doctor of Medicine)とDO(Osteopathic Medicine)どちらの先生に診てもらいたいですか?と病院で言われるくらい、オステオパシーの普及度が高いという事が分かります。

 以下は文献を参照しつつ、少し私なりの表現で記述してみます。

 スティル博士は南北戦争時、北軍の従軍医師でしたが戦中戦後の凄まじき臨床経験から、そして何より二人の息子と養子、家族4人を髄膜炎で亡くしたことによる絶望の中から、当時の薬剤信仰に背を向け根本的な治癒のための理論を追及・展開していきました。

 この理論はその後のオステオパシー医師達と時代の洗礼を受けながら発展しつづけ、現在は『オステオパシーの4つの原則』として集約されてオステオパシー医療の基礎を形作っています。

★第1の原則. 『身体は1つのユニットである』

 人間の体は構造上全体の関わりの中からその働きを考察するもので、部分的に考察することは「木を見て森を見ず」となり混迷を生じます。『解剖学の身体』だけでなく『Body、Mind、Spirit』の三位一体として捉えるという考え方です。

 たとえば腰が痛いときは腰だけに問題が生じているとは限りません。『人間の身体』を多面的な見方をして、悪影響を及ぼしている複数の要素を見出すことがはじまりです。

★第2の原則. 『構造と機能は相互関係にある』

 たとえば猫背傾向の方を想像してみましょう。頭をかしげて背中が丸くなる姿勢では、肋骨に囲まれた胸郭は狭まり肺の拡張が起きにくくなり(構造)、結果浅い呼吸になり全身への酸素供給も二酸化炭素排出も滞ってしまいます(機能)。→(構造)が(機能)に影響します。

 酸素不足の代謝の上がらない生理学的反応全ては(機能)、筋緊張を増して軟部組織の硬化を招きより拡張できない胸郭になり姿勢もより悪くなっていきます(構造)。→(機能)が(構造)に影響します。

 人体の構造は何らかの理由によりその性質にそぐわない機能を強いると、その構造が徐々に変化していきます。そのことは構造が変化をすると、本来発揮していた機能が次第に保てなくなるという負の連鎖を引き起こす原因となりえます。

★第3の原則. 『人体は自然治癒力を持つ』

 人体は内部環境を一定の状態に保ち続けようとします。これを「恒常性:ホメオスタシス」と言います。外的な要因の変化を受けることで、人体は常に変化を続け一定の状態に保とうと24時間亡くなるその日まで働いています。

 この力こそが、そう『自然治癒力』です。オステオパシーの哲学はこの人間が本来持つ力を根源とし、その力を信じています。

★第4の原則. 『オステオパシーの施術は以上第1~第3の原則に基づいて行われる』

 これらの考えに基づいて行う医療がオステオパシーであり、テクニックのみではオステオパシーを示すものではありません。オステオパシーの考え方とは施術そのものが症状を治すのではなく、施術を受けること、日常生活を見直すことにより健康を保つ力の正常化をはかるというものです。

 治癒は、上記3つの原則に基づいたアプローチによって、あなたが元々お持ちの『自然治癒力』が発揮されることで成し得るものです。

 スティル博士は身体が疾患に罹患する要因を構造と機能の関連を研究し、人体解剖によってその関連性を研究し、血液循環の停滞がもたらす体液の科学的な変性が免疫機能の低下を引き起こし、様々な疾患を引き起こすということを解明しました。
 
 さらに循環が停滞する要因を筋骨格系、神経系、消化器系、内分泌系などとの関連から研究し、『身体の構造と機能を統合させている様々な身体の原則』を発見しました。この原則を治療に応用することによって様々な疾患に対応の出来るということを発見し、これを『オステオパシー』と名付けたのです。

クラシカル?

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 A・T・スティルとその最初の弟子たちがアメリカで最初のオステオパシー大学をミズーリ州で開校した折、イギリスのJ.M.リトルジョンは生徒でもあり、生理学を教える先生でもありました。そしてその哲学と技術をイギリスに持ち帰り、イギリスで発展させました。

 発祥の地アメリカでの現代のオステオパシーですが、私が影響を受けた本「いのちの輝き―フルフォード博士が語る自然治癒力」を読むと、現代のアメリカでのオステオパシー医師(DO/Doctor of Osteopathy)は医師(MD/Doctor of Medicine)と同様の教育を受け同様の職域(診断・外科手術・処方・投薬等の全ての「医行為」が認められている)で仕事をするので、経済効率の点でも手技を重視するDOが著しく減り、オステオパシーらしい診方をせずに薬剤処方を主とした医師と変わらぬ仕事をするDOが多くなっていると嘆いています。

 一方イギリスでは、A・T・スティルが考案したオステオパシーの哲学・技法を忠実に守り、現代医学としての調和を考慮して現代に伝えています。なのでクラシカルという言葉は、アメリカから発祥した頃の『治療哲学・治療体系の原型』が、イギリスで現在まで守り発展してきた・・・オリジナルオステオパシーとも言われる、『クラシカルオステオパシー』と呼ばれるようになったのです。

 経験による医学(第一の医学)、専門細分化された医学(第二の医学)双方の行き詰まりが諸処に見られるようになった現代に、これまでに蓄積された膨大な医学知識(科学)を利用しながら、全人的な視点を保持する「第三の医学」の必要度が高まってるとするならば・・・古くて新しい、『クラシカルオステオパシー』の必要性がますます高まってゆくのではないかと考えています。

どんな治療方なの?

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 クラシカルオステオパシーでは生理学的な面から疾患を捉え、筋・骨格系だけでなく神経系やリンパ・血管系にアプローチをします。血液・リンパ・脳脊髄液等の流体が、手足の、臓器の、身体のあらゆる末端まで『自然治癒力』を行き渡らせてくれるのです。

 オステオパシーの診方で、その『循環』が留まらせているIT(それ)を見つけ、それを解放することで円滑な循環が成し得れば健康が保たれるのです。

 クラシカルオステオパシーの技法は他の医学にはない人体生理学に基づいた、奥の深い、また医療の原点(てあて)ともいうべき治療法であり、単に局所の障害を治療するだけにとどまらず、人体という有機体『Body、Mind、Spirit』を治療する全体治療です。

 「木を見て森を知り、森を見て木を知る」そして絶え間ない『循環』が木を森を育ててゆくことに繫がります。

 病気や症状のある特定の部分へ対処する療法(手術も含む)とは異なり、人体が健康を維持するために不可欠である『自然治癒力』『免疫力』『自己調整力』に支障をきたす原因の究明に重点を置き、個々の正常とされる状態を維持するためにはどうしたらよいかを解剖学、生理学、病理学的見地から考察し、その結果から導きだされる全てを実践する手技であり生活指導であり総じてオステオパシーの治療法なのだと思ってます。

具体的な治療はどんなことをするの?

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 オステオパシーと他の手技療法との違いは?

 オステオパシーは他の手技療法が掲げる施術の目的をほとんど網羅しています。「筋骨格系の機能変化と健康には相関性がある」という考え方に基づいて、現在では筋肉、関節を中心に「手で影響を与えられる体の構造物」においてその機能を妨げるもの全てを施術対象としています。

 患者さんの体の状態、身体に起こっている状況にあわせ使用するテクニックも選んでいきます。その選択枝の多さゆえに「体のゆがみを整える」「筋肉の緊張を和らげる」「リンパを流す」というように簡潔には説明しがたいものです。

 長年実施してきたカイロプラクティックが閃光の様なテクニックだとすれば、流れる様な波の様なテクニックとは言えるかもしれません。

どの様な疾患に適応するの?

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 オステオパシーの不適応はたぶんほとんどないと言っても差し支えありません。流れる様な波の様なテクニックなので、骨粗しょう症の進んだ方であっても、急性期の炎症が強い立つことも困難な方であっても、赤ちゃんでも適応します。急性期でも慢性期でもどんな方であってもその方の身体の反応を見ながら刺激量を調整し、多くあるテクニックの中から選ぶことができるので、どの様な症状であっても適応することができます。

 ただ私としてはどこに行っても良くならなかった様な患者さん長年同じ様な症状を繰り返し悩む患者さん、その様な方にこそ、こんな診方や治療の仕方があるという事を伝えたいと思っています。

私の治療の中にあるクラシカルオステオパシーってなんだろう?(これを機会に考えてみました)

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 理学療法は現代西洋医学のリハビリテーションの概念から発展したものです。病院で働いてた頃は、特に入院患者さんの場合(整形外科の術後の場合や、脳血管障害の急性期の場合)、まずは立つこと歩くことを目標に進めるので筋力強化や関節可動域を広げる(ROM訓練は努力と根性です)事が優先事項で、痛みや不快感はやや後回しにするとこもありました。痛いけど頑張りましょう!って感じです。でも運動機能を向上させる事に特化した訓練要素が大きな治療法でした。

 カイロプラクティックを長く学んで、理学療法士時代には脊椎骨盤を構造だけでなく神経学として捉えるような視点があまりなかったことに気づきました。それだけ整形外科ではあまりない視点で、ここまで細かく脊椎を骨盤をとらえるのか!?という気付きで今まで長く学んできました。

 そこでここ5年で出会ったクラシカルオステオパシー・・・鉢植えの観葉植物に水を忘れてしまったら枯れてしまうように、いきとし生けるものが酸素を頂き栄養を運び自己免疫が発揮されるには、水に同じく血液リンパの循環がフルに発揮されなければ人体は様々な疾病や加齢が来すことがあり得るはずです。当たり前のように思いつつも、その当たり前が治療の中では活かされていませんでした。

 『理学療法とカイロプラクティックとをまさに循環させてつなげてる存在がこのクラシカルオステオパシー』に様に感じてます。クラシカルオステオパシーの施術は施術法というよりも施術の考え方哲学に力を入れてるおかげで、今まで自分が培ってきた手技を取り入れることがしやすいものなのです。

 流れる様な波の様な循環してゆく様な施術法なので、理学療法もカイロプラクティックもその流れに交じってゆきやすかったのです。